2011年09月21日

国歌のお話

 日本代表vsトンガ戦が始まる前に、大作(っていうほどでもないけど)を仕上げておこう。今回は「国歌」のお話。英語では「National Song」ではなく「National Anthem」と言うので、ちょっとニュアンスが違うのでしょうか?

 ラグビーのテストマッチ(国代表同士の対戦)の前には、必ず国歌「National Anthem」の吹奏、斉唱が行われます。国によっては、その国の歴史や成立の背景が現れていて、とても興味深いものもあります。

 国の成立を一番表わしているのは南アフリカ国歌でしょう。この国の国歌は、もともと2つあった国歌が1つに繋げられたもの

 前半はアパルトヘイト政策期間に黒人が歌っていた「Nkosi Sikelel'iAfrika」(神よ、アフリカに祝福を)。そして後半は、ネルソン・マンデラ氏が初の黒人大統領に選ばれるまでの白人政権の下で使われていた国歌「Die Stem van Suid-Afrika」(南アフリカの呼び声)。

 2つの曲が自然にスムーズに繋がれていて、とても美しいメロディになっています。また前半部はコサ語とズールー語、後半部はアフリカーンス語と英語で書かれており、4つの言語が含まれた歌になっています。

 この国歌が採用されるようになった経過を、他の歴史資料、あるいはラグビー好きの方には『インビクタス』(映画・原作)で見て頂ければ、この歌の重みを感じられるのではないかと思います。

 そして国の歴史を感じる国歌といえば、開催国ニュージーランド。原住民マオリ族の習慣を重んじる国らしく、マオリ語と英語の2コーラス歌います。英題は「God Defend New Zealand」(神よニュージーランドを守り給え)。マオリ語では「アオテアロア」(長く白い雲のたなびく国)。

 一方で歌うのが国歌ではない場合があります。それは、実際の国家とは違う範囲で“国代表”が形成されているイギリスとアイルランド。グレートブリテン島からはイングランド、ウエールズ、スコットランドの3つの代表が形成されます。

 このうちイングランドはイギリス国家である「God Save the Queen」(女王陛下万歳)を歌います。この歌はかつてイギリス連邦国の国歌として採用されていたため、現在もニュージーランドとしては国歌、オーストラリア、カナダなどでは“王室歌”とされているそうです。

 つまりニュージーランドには国歌が2つあるんですね。ということは、ニュージーランド対イングランドの試合では、ニュージーランド側から見ると、自国の国歌が2回歌われているというわけです。実際にはそんな気分ではないと思いますが。

 残りのウエールズとスコットランドはそれぞれ「Land of My Fathers」(我が父祖の土地)、「Flower of Scotland」(スコットランドの花)を歌います。基準がよく分からないのですが、ウエールズは「国歌」であるのに対し、スコットランドは「非公式国歌」なのだそうです。

 ちなみに「Land of My Fathers」はウエールズ語で歌われます。もう全然意味も何も分からないのですが、私はこの曲が一番好きです。とてもメロディが美しい割に重厚感があるからでしょうか。試合前の観客を交えた大合唱は、その国の人間でないのに涙が出そうになります。

 そして、一番難しいのがアイルランド。ラグビーではイギリス領北アイルランドとアイルランド共和国の連合で1つの代表チーム。つまりはアイルランド島の代表チームとなります。政治的、宗教的に色々な紛争を抱える地域がひとつのチームになっているという難しさ。

 1995年以前はアイルランド共和国の首都ダブリンでテストマッチが行われる場合はアイルランド共和国国歌「The Soldier's Song」(兵士の歌)、北アイルランドのベルファストで行われる場合は英国国歌「God Save the Queen」が歌われていたそうです。

 また、対戦国のホームでテストマッチが行われる場合はアイルランド側の国歌斉唱はなしということにもなっており、この状況を解決するべく、1995年に“アイルランドラグビーアンセム”として「Ireland's Call」が作られました。

 以降、ダブリンでのテストマッチでは「The Soldier's Song」と「Ireland's Call」の2曲が歌われますが、その他の地でのテストマッチでは「Ireland's Call」のみが歌われます。実際にはまだ色々問題もあるようですが、この歌の合唱にも毎回心打つものがあります。

 最後に番外編。アルゼンチンの国歌は前奏がとても長く、初めて聞いた時は「あれ、歌詞がないのかな?」と思うぐらい。「あ、このまま終わっちゃうんだ」と思ったところで歌詞が始まります。

 ということで、かなり長くなってしまいましたが、私は出来るだけ試合前の国歌斉唱と、その時の選手の表情を見るようにしています。何か色んな思いが伝わって来そうで、大好きな場面なのです。

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<日本代表の「君が代」斉唱>
posted by らぐじ〜 at 13:16| Comment(0) | TrackBack(0) | RWC2011 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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